配偶者ビザ

日本人とご結婚された外国人は、査証(ビザ)を取得することで日本に入国することができ、空港や海港で在留資格を得ることで日本に合法的に滞在することができます。

 

厳密にいうと入管法では「入国」と「上陸」は区別されています。入国とは日本の領海や領空に入ることを言います。上陸とは空港や海港から日本の領土に入ることを言います。時々ご質問を頂戴しますが、入国と上陸の区別は、配偶者ビザの取得を考えていらっしゃる方は当面無視をしても大丈夫です。

Ⅰ 在留資格と査証の違い

外国人のお相手が日本人の配偶者として日本に長期的に滞在するためには配偶者ビザが必要です。

ここでは配偶者ビザが何であるかををきちんと把握するために、ビザ(査証)とは何か、在留資格とは何かを理解しましょう。

Ⅰ-1 査証(ビザ)

査証(ビザ)は、本人が所持するパスポートが本国官憲によって適法に発給された有効なものであることを確認するとともに、査証に記載された条件・目的で日本に入国することについての推薦状の意味をもっています。

日本人の配偶者に限らず、およそ外国人が日本に入国する際は、原則として有効な査証を所持していなければなりません。査証を発給するのは外務省の在外公館です。

査証は推薦状に過ぎないことから、これさえあれば必ず入国できるというものではありませんが、いずれにせよ日本に「入国するとき」に必要となるもので、「入国後」は不要となります。

査証は何度も使用できるマルチ査証でない限り日本に入国する際に「キャンセル」のスタンプが押されて無効化されます。

 

査証免除制度というものがあり、短期滞在の場合は査証の取得が免除される国・地域があります。

査証免除国の国籍を持っている方は、有効なパスポートさえもっていれば、パスポートにビザが貼られていなくても(他の要件を満たしていれば)入国することができます。

Ⅰ-2 在留資格

在留資格とは、法務省の入国管理局が空港で付与する日本の滞在資格のことです。

現在は27種類あり、審査をパスすればその外国人の滞在目的ごとにその中のひとつが与えられます。結婚生活などで中長期的な日本滞在を希望する外国人は、空港であらかじめ取得した在留資格認定証明書を入国審査官に提示する方法により自身の在留資格該当性立証します。

 

各在留資格はそれぞれ日本で行なうことができる活動が定められており、例えば在留資格「日本人の配偶者等」であれば、日本人の配偶者としての活動をすることができます。

 

在留資格が付与される際に、在留期限も決定されます。短期滞在者の場合は、パスポートに貼られる灰色のシールに在留資格と在留期限が書かれています。中長期滞在者の場合は、空港で在留カードを発行してもらいます。その在留カードに与えられた在留資格と在留期限が記載されています。

Ⅰ-3 いわゆる「配偶者ビザ」

以上のご説明から明らかなように、査証(ビザ)は、日本に入国する際には必要ですが、入国してしまったら用済みになるものです。一方、在留資格は日本に到着してから空港や海港で取得するもので、その後の日本の滞在を合法なものにしてくれる資格です。

 

日常用語として「配偶者ビザ」という言葉が用いられますが、多くの場合それはビザではなく在留資格「日本人の配偶者等」のことを指しています。「在留資格」という言葉が一般的ではないため「配偶者ビザ」と称されていますが、法的には正確な言葉ではありません。

Ⅱ お相手が来日するまで・来日してからの4つのステップ

ステップ1:在留資格「日本人の配偶者等」の申請

結婚したお相手が海外にいらっしゃる場合には、日本人である配偶者が日本の入国管理局に対して在留資格認定証明書交付申請をします。

配偶者ビザの申請書類の一例

・在留資格申請書

・質問書

・顔写真

・理由書又は陳述書

・日本の戸籍謄本

・相手国官憲の発行した婚姻証明書

・出生証明書

・住民票

・住民税の納税証明書

・住民税の課税証明書

・直近3か月の給与明細

・確定申告書

・所得税の納税証明書

・在職証明書

・履歴書

・同居を証する書面

・身元保証書

・預金残高証明書

・通帳のコピー

・不動産の登記事項証明書(登記簿謄本)

・賃貸契約書の写し

・海外への送金記録

・メール、手紙、LINEやWechatなどSNSでのやり取り

・電話の送受信記録

・交際を証明する写真

・結婚式の写真

ステップ2:在外公館で査証の申請

査証申請に必要な書類は、在外公館ごとに異なります。必要書類の情報は在外公館のホームページに載っています。最新の情報をホームページでご確認ください。

 

<基本形:在外公館での査証申請の必要書類>

・申請書

・パスポート

・写真

・在留資格認定証明書の原本

 

上記の基本形に国ごとの追加書類が加わることがあります。

・インドネシア:KTP(住民登録証)

・中国:戸口簿写し、居住証明証

・韓国:住民登録簿

・フィリピン:PSA発行の結婚証明書、出生証明書

ステップ3:有効期限内に来日&在留カードの受領

査証が発給された場合は、在留資格認定証明書が申請人に戻されますので、その原本をもって来日します。

査証が発給されなかった場合は、在留資格認定証明書は申請人に返却されず、没収されます。

 

在留資格認定証明書は発行から3か月という有効期限がありますので、この期限内に日本に上陸する必要があります。空港で在留カードが交付されます。

ステップ4:市区町村役場で住民登録

空港で受け取った在留カードの住所欄は「未定」とされていますので、入国後にお住いの市区町村役場で住民登録をします。在留カードの裏面に、市区町村役場の担当者が住所を記載してくれます。

Ⅲ お相手が日本にいる場合の3つのステップ

お相手が現在保有する在留資格在留期限によっては在留資格変更許可申請ができない場合もありますのでご注意ください。

ステップ1:在留資格と在留期限の確認

在留カードまたはパスポートに貼られた証印により、現在の在留資格在留期限を確認します。

在留資格「短期滞在」から配偶者ビザへの変更は法律上「やむを得ない特別の事情」が立証されたときにのみ変更が許可されます。

在留資格「技能実習」から配偶者ビザへの変更は母国の送出機関との契約内容や技能実習ビザ取得時の申請内容との整合性から一度出国を余儀なくされることが多いです。

ステップ2:在留資格変更許可申請

入国管理局に対し在留資格変更許可申請を行います。

在留資格変更許可申請の場合は、これまので在留状況が審査の対象となり、これを「素行の善良性」とか「狭義の相当性」と言います。例えば留学ビザを有する学生の学校の出席率が悪かったりすると配偶者ビザへの変更申請に影響を及ぼします。

ステップ3:市区町村役場で住民登録 ※短期滞在からの変更の場合

短期滞在から配偶者ビザへ変更をされた場合は受領した在留カードに住所が記載されていませんので、市区町村役場で住民登録を行います。

Ⅳ 査証事前協議について

査証事前協議制度は入管法に規定のある制度ではありません。

 

インターネット上に「査証事前協議制度」が「在留資格認定証明書制度」と同等の制度であるかのような誤解を与える記述がみられることから、混乱したお客様から時折ご質問をいただくのですが、この制度は現在ほとんど利用されていません。

在外公館ホームページにおける査証事前協議制度についての言及

               案内の有無      
在アメリカ日本国大使館 あり
在中国日本国大使館 なし
在フィリピン日本国大使館 なし
在韓国日本国大使館  配偶者ビザ案件では利用不可。興行などは利用可能な場合あり。

査証事前協議制度

結婚をされたお相手の国籍がアメリカでない限り、配偶者ビザ案件でこの制度を利用することはほぼ不可能です。アメリカであっても在留資格認定証明書を取得するよう勧められますが、ホームページに明記している以上は受理しないことはないものと考えられます。

 

在留資格認定証明書制度ができる前はすべて査証事前協議制度で処理していたのですが、あまりに時間がかかりすぎる方法なので、これを改善するために在留資格認定証明書制度が作られました。

 

なぜ査証事前協議制度だと時間がかかるかというと、在外公館→外務本省→法務本省→入国管理局というように、情報のやり取りに霞が関の本省を挟む制度だからです。

 

外務本省の下部機関である在外公館と、法務本省の下部機関である入国管理局は、直接情報をやり取りすることができません。在外公館はまず外務本省に連絡し、外務本省は法務本省に連絡し、法務本省が入国管理局に伝えます。

このような伝言ゲーム的に迂遠なルートをたどるため、事前協議制度は在留資格認定証明書制度よりもはるかに時間がかかります。

 

在留資格認定証明書制度は外務本省と法務本省をスルーして、入国管理局と在外公館が直接コミュニケーションできる制度として設計されています。

すなわち、入国管理局が在留資格認定証明書を交付すると、その証明書が本人によって直接在外公館に持ち込まれます。

在留資格認定証明書という書面を媒介にして、入管と在外公館が直接やり取りできるように工夫して時間短縮を図ったのが在留資格認定証明書制度なのです。

 

査証事前協議制度は霞が関の本省を巻き込む使い勝手のの悪い旧制度ですから、あえてこの制度を選択しなければならない場面はほとんどありません。

あるとすれば現在、国際結婚をされた日本人と外国人のご夫婦が、夫婦ともに外国に住んでいる場合です。

 

ただし査証事前協議制度が利用される可能性を否定できない限定的な場面であっても、多くの在外公館ではそもそもこの制度の利用が事実上不可能となっていますのでお気を付けください。